会社の財務諸表を見ればその会社のお金の流れが分かります。そして株式投資では一体何に会社がお金を使っているのか観察することがとても大事です。
理論や理屈のお話をしてもしょうがないので、今回は実例として日本随一の大企業であるトヨタの投資キャッシュフローの支出を観察して、そこから何がくみ取れるのか、まとめてみました。
2012年から2021年度決算期の連結上の投資キャッシュフローをグラフ化して読み取れること
上が、投資キャッシュフローのグラフです。こうしてみるとグラフの特徴として3つほど上げることが出来るかと思います。
1つ目は2016年にドカンと投資支出が盛り上がっていること。
2つ目は2016年を境に、投資支出の成長が鈍化していること。
3つ目は無形固定資産がポコッと表れていること。
1点ずつ何があったのか確認してみます。
2016年にドカンと投資支出が盛り上がっている
まず、1つ目の2016年の投資支出が盛り上がっている点です。これは有形固定資産と賃貸資産の取得の内、賃貸資産によるものだとグラフから読み取れるかと思います。
賃貸資産はリースとして貸し出すための資産です。2016年は特に賃貸資産を取得しています。
この賃貸資産の中身ですが、トヨタの2016年度決算の有価証券報告書によるとトヨタ・モーター・クレジット株においてオペレーティング・リースの対象となる車両の取得と記載されています。
意味するところはローンで購入できる自動車を購入したこととなります。 トヨタ・モーター・クレジット(株)とは1982年に設立されたトヨタフィナンシャルサービス(株)の完全子会社です。トヨタフィナンシャルサービスで購入したオペレーティング・リース用の車両の取得というわけですね。もちろんどこから購入したのかというとトヨタ本体からでしょう。連結決算では親会社(トヨタ)、子会社(トヨタフィナンス)での取引もこのように反映されるわけです。
なぜこんなに購入しているのか。他の記事との突合せとなりますが2015年9月にトヨタは北米市場でプリウスの4代目モデルを発表しています。
当時の記事によると既に、5万代の予約注文があったようです。プリウス4代目をトヨタフィナンスが北米向けに大量の台数をローン払いできるように購入したということでしょう。トヨタはその需要に応えようとした痕跡と言えるでしょう。
2016年を境に、投資支出の成長が鈍化している
2016年の後、どんどん投資活動による支出のキャッシュフローは横ばいとなっています。
こちらは答えとしてプリウス4代目の需要が落ち着きつつ、さらに販売台数が落ちてきていることが理由にできます。2020年度は全盛期の3割ほどしか販売されていないのです。この要因が賃貸資産の取得を押さえつけている格好となっています。
無形固定資産がポコッと表れている
2020年からポコッと、無形固定資産の取得が活動内容として現れてきます、
管理人の憶測になってしまいますが、トヨタは工場や機械などの実態のあるものに近年投資をしているわけでなく、AIや自動運転といった技術に投資を目に見えて本格的に始めている証左ではないでしょうか?
2019年までは有形固定資産、及び賃貸資産の購入がトヨタ自身も重視していたことが伺えます。ですが2020年からは無形固定資産項目を新たに設けている。つまりソフトウェアやコンピュータ科学を用いた技術を用いた資産を重視していることの表れと捉えることが出来ます。もちろん、うまくいくかどうかは今後のお楽しみといったところでしょう。
まとめ
以上から、投資支出によるキャッシュフローをスタートにトヨタがヒット商品を出したこと、ヒット商品が落ち目になってきているため支出を抑えていること、さらに今後の新技術への投資を行っていることを確認することが出来ました。
このように財務諸表の投資活動によるキャッシュフローを起点に、企業が何を重視して投資しているのか確認することができます。
今回はトヨタという日本で一番大きな会社なのもあり、いろいろな業界誌やweb記事から補足を得ることが出来ました。
今後とも、このようなコンテンツを作り業界や会社の情報分析のお助けになればと思います。なお、管理人のこの記事はトヨタへの投資を勧誘するものではありません。責任は負いかねますのでご了承ください。
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