市場を覆す酸化ガリウムパワー半導体 日本企業(銘柄)の取り組みはどんな状態か?

日本で健闘している半導体分野、それはパワー半導体です。世界での日本勢のシェアは2割とまずまずの成績です。しかしながら、現在の研究動向については日本勢が一歩リードしているのは事実で今後の展開が期待されることは確かです。世間を騒がせた酸化ガリウムパワー半導体が切り札になりえます。

ただし、漫然とパワー半導体に関する企業を選択するだけではその恩恵を受けることはできません。

そこで今回、管理人はパワー半導体について勉強し各企業の動向を調査したうえでの関連企業を整理してみました。

そもそもパワー半導体とは

パワー半導体とはパワーデバイスとも呼ばれ、電力の制御を主に担う半導体を指します。一般的に半導体というとCPUやLSIなどのコンピュータの知能を扱う部品をイメージされるかもしれませんが、電力制御の分野でも半導体は一躍買っているのです。この一般的な頭脳面での半導体と違ってパワー半導体は電力制御を担うため大きな電流を扱いつつも壊れないかつ電力を損失しないという特性が重要になります。

電力損失の低減はパワー半導体についての大きな開発テーマです。いかに、電力損失を低減できるかが次世代のパワー半導体の性能を決定していると言っても過言ではないでしょう。電力損失が高いとそれだけ無駄な電力が発生します。昨今のSDGの面からしても電力損失の大きなパワー半導体は避けたいところです。

もちろん、コスト面でも量産のめどが立たないと商用化には至りませんから、コスト低減という軸も意識する必要があります。

現在のパワー半導体の種類

パワー半導体に使用されている素材は現時点で4つです。「シリコン」「炭化ケイ素(Sic)」「gan」「酸化ガリウム」の4つ。

かつてパワー半導体はシリコン製が主力でしたが、徐々にこのシリコン製から代替がなされてきています。現在、主力になりつつあるのが炭化ケイ素(Sic)ganで作られたパワー半導体です。炭化ケイ素のパワー半導体はシリコンよりも電力損失が小さく、耐熱性もあるため大電流を扱うことが出来ます。

そのため、炭化ケイ素のパワー半導体はEVなどの電力モーター制御に有利です。実際、テスラのEVであるモデル3にはSicパワー半導体が使用されています。

しかし、Sicとganのパワー半導体のデメリットとしてコストの高さが挙げられます。シリコンで作る半導体よりもこれらのパワー半導体はコストが高く、それが市場の普及の足かせになっているのです。

これを解消しつつコスト面もクリアできると目されているのが酸化ガリウムで作られたパワー半導体です。量産化の研究がなされてきましたが、2021年6月に量産化のめどが立ったというニュースがありました。

Sicパワー半導体関連の企業(銘柄)の取り組み

酸化ガリウムパワー半導体が優れていると言っても、未だ量産化に成功したのは一社のみで実績も皆無という状況です。この中、Sicパワー半導体を主力として増産している企業が多数です。とくに富士電機はSicパワー半導体の増産にかなりの力を入れており、マレーシアに増産設備を1600億円投入しているほどの力の入れこみ具合です。

富士電機、EV向け半導体に追加投資400億円 能力増強へ - 日本経済新聞
富士電機は2023年3月期に電気自動車(EV)などに載せるパワー半導体に約400億円を追加投資する。マレーシアでの生産能力の増強などに充てる方針だ。23年3月期までの4年間で1200億円の投資枠を設けていたが、さらに上積みする。EV向け需要の拡大を見据えて能力増強を急ぐ。パワー半導体は電力の効率的な制御のためにEVやエ...

また、トヨタ自動車がEV生産を発表しました。これに伴ってトヨタに部品を提供しているデンソーもSicパワー半導体を納入することになるでしょう。ハイブリットで既に実績のあるデンソーはEVでもこれらの製品をトヨタに納入することが予想されます。

デンソーのSiCパワー半導体、新型ミライのFC昇圧コンバータで採用
デンソーは2020年12月10日、SiCパワー半導体を搭載した昇圧用パワーモジュールの量産を開始したと発表した。トヨタ自動車が同年12月9日に全面改良して発売した燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に搭載されている。

酸化ガリウムパワー半導体関連の企業(銘柄)の取り組み

酸化ガリウムコスト面、そして電力低減機能の面で優れていると指摘しました。実際に酸化ガリウムパワー半導体の開発は進んでいるのでしょうか?この点については日本のタムラ製作所出資のベンチャーと大学の研究機関が開発を行っており2021年6月21日に量産化に成功しています。

市場に実際に出回るのに時間がかかるでしょうが酸化ガリウムパワー半導体についてはタムラ製作所の取り組みが一番有望だと考えてもよいでしょう。これを受けて株価は暴騰しましたが、現在(2021年12月30日)は落ち着いています。

β酸化ガリウム |タムラ製作所

今後のパワー半導体の需要について

富士経済によると今後もパワー半導体については需要が堅調に生まれると予測されています。

富士経済の需要予測より管理人図表化

Sic(炭化ケイ素)パワー半導体については電気自動車、太陽光発電や風力発電など今後、日本で普及する物品に搭載される半導体であるため、需要は底堅く推移すると思われます。トヨタ自動車もEVに大々的に参入すると発表がありましたし、また日本政府主導の大規模な洋上風力発電計画もパワー半導体の生産を後押ししてくれることでしょう。

Ganパワー半導体については、これまでの情報通信機器での使用はもちろんのこと、物のインターネットIOTの普及でさらに加速するのではないかと管理人は考えています。

また、コスト面でこれらの二つのパワー半導体を凌駕するのが酸化ガリウム半導体です。市場予測では590億円と他の半導体よりも市場規模は少ないように感じますが、そのコスト性が如何なく発揮できれば上記二つの半導体のシェアを奪うこともできるでしょう。

また、上記二つの半導体は既にドイツのインフィニオンテクノロジーズ(世界シェア20%)、アメリカのオン・セミコンダクター(世界シェア8%)がシェアを築きつつあります。日本勢は如何にコスト面でこれらの企業からシェアを奪うかの戦いとなるでしょう。

日本勢は大規模な設備投資合戦にならないうちに酸化ガリウム半導体のシェアを築けるか

日本の企業の弱点、引いては国の弱点としては国がバックアップとなってその産業に中々お金を透過しないことにあります。その点、韓国や台湾をはじめ世界の半導体立国は国のバックアップをもらいつつ有利に開発や量産計画を進めています。

今後、経済安保という言葉も出てきたように戦略物資を自国内で製造する能力が重要視されるようになります。日本政府も本腰を入れて半導体メーカーのバックアップに乗り出すことが期待されます。知能面の半導体だけでなく、パワー半導体方面へのバックアップも期待したいところです。

そして海外勢が酸化ガリウム半導体の量産化を開始する前にシェアを築いてしまう必要があります。

まとめ

Sicパワー半導体:富士電機、デンソー

酸化ガリウムパワー半導体:タムラ製作所

今後、日本勢のパワー半導体での巻き返しがあることが期待できます。しかしながら、既に外国の競合もそれなりのシェアを築いております。切り札の酸化ガリウムパワー半導体の商用化も当分先というのもありますから、今すぐに関連銘柄に投資しても長期での保有を覚悟しなければリターンは期待できないかと思われます。

商用化が達成できれば市場を覆すことが出来る大きなテーマではありますのでしっかりと関連銘柄をウォッチしていきたいところです。

半導体分野は日進月歩で物事が進みますので、管理人も逐次情報の更新があれば記事を追加更新する気持ちで、ウォッチしていきたいです。

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