投資家なら見るべき グレイステクノロジーで何が起きていたかを

管理人は、とある上場している会社で経理をしている人間です。まぁ、上場している会社と言ってもしょせん人間の集まりですから何かしらのトラブルはあるものです。管理人もたまにそういった案件に巻き込まれます。

しかし、今回改めて調査したグレイステクノロジーの不正は会社一丸となった不正でした。管理人も5年間経理をしていますがこれを見破るのは相当難しいなという感想を持った次第です。

投資家はこういった倫理観の欠如した会社の株を知らず知らずのうちに買ってしまうというリスクがあるのを改めて痛感させられました。

社長自ら不正を陣頭指揮

創業者の社長が自ら売り上げの架空計上を推奨しており、そして陣頭指揮まで取るという凄まじさです。起業規模自体は小さいですが、かつてのエンロン事件と被るほどの確信的な犯行と言わざるを得ません。エンロン事件では監査法人までもが、手を組んで犯行に及びましたがグレイステクノロジーに至っては完全に監査法人をだまし通しちゃっています。

これは、社長だけでなく経営幹部も相当な偽装工作を行っていたのも一つの理由でしょう。

社長だけでなく経営幹部を巻き込んだ組織的犯行

調査報告書を読むと、社長だけでなく経営幹部たちも手を染めていることが分かります。原因としては社長に育てられた幹部たちは架空の売上を上げる重大さに薄々感じながらも習性として社長への忠誠心を優先してしまったためです。この結果、売り上げの前倒し計上という簿記のルール上あってはならないことが常態化したということです。これを監査法人は見抜けなかったのでしょうか。。。

売却した株式で入金処理をしてしまうほどの入念さ

どうして売り上げの架空計上を監査法人は見抜けなかったのでしょうか?それは監査をする上でキーポイントとなるキャッシュの入金があったからでしょう。売上が実態に伴わなければ銀行預金に入金がなされるわけありません。ですが、グレイステクノロジーの場合、入金がなされてしまっていたわけです。しかも経営陣の資材を投じる形で。

経営陣の資材はどこから出てきたのかというと、グレイスの架空売り上げによって高騰した株式の売却から発生したものです。架空売り上げを行う→株価が上がる→偽装工作の原資に使うという自転車操業が出来上がっていたのです。

自らの資産を偽装工作の原資にするとは前代未聞で監査法人もそんな発想を持てた人はいないのではないでしょうか?

強烈なパワーハラスメントにより従業員を統制

従業員は何も出来なかったのでしょうか?調査報告書を見る限り経営者の強烈なパワーハラスメントの前、そして経営陣の不正に向けた一致団結さから何もすることはできなっかたと思われます。会社は腐っても人の集まり、権力を持った上の人間に立ち向かうのは相当な能力と計画性を持ったハイスペックな人でないと太刀打ちできません。管理人も会社勤めを通して経営陣の差配で物事が進む様をこれでもかと見せつけられてきました。

会計方針の不正、コーポレートガバナンス不備、内部統制不備のオンパレード

何もかもが真っ黒で違法地帯となってしまったグレイステクノロジーの経営。ここまで違法だと外からその違法性に気づくのは難しいのだろうと考えられます。監査法人にしろ我々経理マンにしろ何か間違った処理を見つけるには、参照する先として正常な処理や正常な手続きに則った処理と見比べて比較検討をします。簿記の構造上、常に正しい処理を行っていれば、あるとき間違った処理をしてしまってもひずみが生まれることで見つけることが出来ます。

しかし、グレイスの様に何から何まで間違ったことを貫き通し、そのうえ偽装工作までされては不正が行われているのではと感付くことさえできないかもしれません。相当、悪どいことをしているという認識を持たざるを得ません。

投資家はどうするべきか

グレイスは上場廃止が決まりました。上場廃止はもちろんですが、今後経営は立ち行かなくなるほどのインパクトをもたらしたことに違いはありません。株式は無価値となり取引先には信用を無くすことでしょう。

このような会社を投資してしまった人たちもいるでしょうし、保有していなくとも投資先として候補に上がってしまうこともありえるでしょう。

では、どうするか?小規模な会社の成否は社長がキーマンです。小さな会社ほどその経営成績は社長の能力に左右されます。投資先が成功するのも失敗するのも社長次第ということです。つまり何が言いたいかというと投資先企業の社長を綿密にリサーチすることが今後、中小企業へ投資する我々がとり得る対処方法なのです。

例えば、転職サイトの口コミに社長の風貌や人となりが書かれていることがあります。これを土台に社長の人物像を調査していくのも一つの手でしょう。また、決算説明について動画をあげている会社もあります。社長が演じ切っていたら難しいでしょうが、変な点やおかしいところがあれば意外と素人の我々でも違和感を感じるものです。人物の調査というのはストーカーみたいで気が引ける方もいらっしゃるかもしれません。ですが株式を上場している経営者に対して我々もそのくらい手を打たないと生き残れないという事例を作った事件でしょう。

参考: https://ssl4.eir-parts.net/doc/6541/tdnet/2072811/00.pdf (グレイステクノロジーの調査報告書)

コメント

タイトルとURLをコピーしました