株式投資をするにおいて、企業の「これまでの経営成績」を調査することは欠かせません。
将来のことは判断つかないとは言うものの、業態が大幅に変わることがない限り来年もこれまでの経営成績の延長線上にある可能性が高いためです。つまり、将来の業績は過去の経営成績に幾分かの変動分を足したり引いたりすることで導き出せます。
過去の経営成績を把握すには、公開されている有価証券報告書を調査することが一番手っ取り早いです。しかしながら、有価証券報告書は膨大なページ数がありこれをくまなく見るのは上級者向きです。初心者が有価証券報告書をくまなく見ると心が折れてしまいます。
そのため、初心者は見るべきポイントを極力抑えて数値をエクセルなどにまとめるなどして他の会社との比較に用いましょう。今回は株式投資をするために過去の経営成績をちゃんと理解を促す最低限の財務諸表の見るべきポイントを紹介します。
有価証券報告書を手に入れよう
まずは、有価証券奉公書を手に入れなければ始まりません。有価証券報告書を手に入れる方法は2つあります。1つは企業のIRを掲載しているホームページから手に入れる方法です。そして2つ目に金融庁が金融商品取引法に基づいて設置しているwebサイトの「edinet」から手に入れる方法です。「edinet」は無料で活用することが出来るので是非とも、ブックマークに登録をしておきましょう。
今回は、いろいろな会社を検索するのに便利なので「edinet」の方を活用します。まずは、上記のリンクからedinetに入ってもらってメニューの書類検索というボタンをクリックしましょう。ボタンを押すと検索画面が現れます。検索画面が現れたら欲しい書類を有価証券報告書にチェック、欲しい決算期を選択して、企業名を入力して検索します。今回はユニクロことファーストリテイリングを検索してファーストリテイリングの有価証券報告書を見て解説します。
まずは、売上をチェックしよう
企業は売上をあげながら、拡大していきます。そして売上を上げることで生き永らえます。売上のない会社は存続することはできません。当然ですね。企業は消費者にサービスや財などの価値あるものを提供することで売上をあげます。この売上はどこに有価証券報告書のどこに掲載されるのでしょう?
確認できる方法同じ有価証券報告書の二か所です。企業の概況というページと経理の状況というページから確認することが出来ます。
企業の概況というページだと5か年分の売上の情報が載っているので管理人はまずは企業の概況というページから売上を確認します。投資対象としてみるなら売上が右肩上がりだと望ましいです。
売上原価をチェックしよう
企業は売り上げを上げるために、商品を仕入れて加工したりあるいは、商品をそのまま消費者に売っています。そこで掛かった費用が売上原価になります。製造業やソフトウェア業の場合は売上原価の中には商品の仕入れにかかった費用はもちろん、人件費製造にかかった各種費用がこの項目の中にインプットされます。売上原価は、経理の状況という項目の損益計算書をチェックします。
売上原価はどのくらいあればよいのでしょう?目安としては、大体売り上げに対して半分(50%くらい)であれば上々でしょう。売上原価が売上を超過していると何かビジネスの部分で根本的におかしいことになっているので投資は控えた方がよいでしょう。
EPSあるいは当期純利益
最終的に残った利益が当期純利益、あるいはEPS(1株当たり純利益)です。当期純利器及びEPSも損益計算書から確認することが出来ます。この項目は基本的に黒字が望ましいです。ただし赤字で評価される会社もあります。
企業はこの当期純利益を原資に配当や自社株買いなどの株価対策も行う。あればある分に越したことはありません。前期比15%以上の増加は業績に勢いがついている状態なのでそのような会社を見つけたらフォローして監視しましょう。
ただし、当期純利益をため込んでため込むだけでは将来につなげられないのでNGです。以下は、どのように将来に繋げていくのか見るべき項目も挙げます。赤字になることもある項目なのでどんな影響で赤字になったのか把握すしましょう。例えば、売上原価が売上を超過しているのか、あるいは販売管理費(会社の営業活動によって発生する費用)が圧迫しているのか、特別損失が出たのかです。
投資キャッシュフローを見よう
当期純利益をため込むだけため込むのでは将来に繋げられないと述べました。では、企業の次につなげていくための項目として何を確認すればよいのでしょう?まずは有形固定資産の取得、無形固定資産の取得などがなされているかチェックしましょう。
有形固定資産の取得、あるいは無形固定資産の取得はキャッシュフロー計算書の投資にかかった支出という項目で確認することが出来ます。目次の経理の状況という項目にあります。
将来の消費者の需要に応えるための設備投資はここから把握できます。業態によってまちまちですが、製造業は特にここが大きく動くときもあるので何をしているのか非財務情報もチェックしましょう。有形固定資産とは工場やその設備、自社所有のオフィスや自動車を指します。無形固定資産とはソフトやシステム外注から手に入れるし内製化したものもここに入ります。
逆にここで支出が出ていない企業の将来性は疑問がつきます。というのも現代社会では消費者や企業の技術の移ろいが激しく常に何かしらの投資は続けなければいけない激動の時代だからです。管理人の属している会社も祖業に胡坐をかくことなく、いろいろな業態に手を出してみては撤退をしたり当たりを引いたりして事業の拡大を模索しています。投資に関する支出がない会社は経営者がサボっている可能性があるので注意しましょう。
研究開発活動も確認しよう
製薬会社は特にここの支出が常にあります。トヨタ自動車なんかも研究開発費は非常に多い会社として有名です。優れた経営をしている上に研究開発費をしている日本企業は本当に希少なので見つけたら教えてほしいほどです。それだけ日本の会社は研究をしていません。今回のファーストリテイリングは特に研究開発はしていない模様です。SPA(自社でブランドを開発して小売りまで手掛ける業態)とはいえそれほど研究開発に特筆すべきことはないといったところでしょうか。
株主資本及び純資産の部を確認しよう
儲けた利益が蓄積されているかチェックしましょう。そのための項目が純資産の部です。純資産の部は株主の持ち分が大部分を占めます。会社は資金調達先として株主の自己資本、そして債権者の他人資本があります。債権者の他人資本は、銀行からの借り入れや社債の発行など他人にお金を出してもらい、あとからそれを返済しないといけない性格を帯びています。
景気がいけいけのときはここが気にされることはありません。しかし不況になると株主資本が大きいところが安定感がありリスクとしてみなされにくくなります。不景気になると売り上げが伸び悩み資金の出どころとして負債の返済が現金の出金として圧迫するからです。
総資産-負債=株主資本 なので負債の割合が多いと株主資本の割合も少なくなります。株主資本の割合が少ないと負債の割合が多いということになり、景気が不安定な時はリスクとしてみなされるので最後にここは見ておきましょう。目安としては50%くらいあれば、大丈夫でしょう。
最後に数値をまとめてみて競合他社と比べてみよう
これらは、すべて一社だけ見ればいいというわけではありません。個別株投資は数ある会社から一つ選ぶという行為ですから、他の会社の状況の確認にも必要となります。ファーストリテイリングであれば、しまむらやGUなどの他のSPA展開しているような企業と比較するとファーストリテイリングの置かれている状況がより分かるようになるでしょう。
まとめ
1売上や売上原価をチェックする→そのビジネスの良しあしを判断
2当期純利益やEPSをチェックする→株主還元や次の業態展開のための資金の源泉の確認
3投資キャッシュフローの支出をチェックする→設備投資を行って次に向けた施策を打っているか
4研究開発活動をチェックする→自社の強みの源泉を育てているか
5純資産、株主資本の割合をチェックする→不況になって経営が圧迫しても持ちこたえる体力があるか
6以上の数値をまとめて、他社と比較してみる
以上のことを、実践できるようになりましょう。
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