日本の隠れた半導体のファブレスメーカーであるメガチップスはゲームをしたことがあれば誰でも知ってるであろう会社の縁の下の力持ちです。その会社とは言わずと知れた任天堂。メガチップス自体は1990年代の創業で、その頃からゲーム機開発を任天堂と一緒にやってきた仲です。メガチップスの売り上げの9割から8割が任天堂向けというほど、任天堂がお得意さんなのです。
この記事ではメガチップスの現状から、そして将来展開まで公開されている情報をもとに紹介していきます。
そもそもファブレスメーカーとは
そもそも、ファブレスメーカーという意味から確認しましょう。ファブレスメーカーとは工場を持たずに、自社で設計・販売だけを行うメーカーのことを指します。日本が半導体に強かったころ、自社で設計・製造・販売というすべての工程を行う垂直統合型の会社が主流でした。
しかし、半導体には非常に精度の求められる作業工程がいくつもあり、その作業工程自体に大きなビジネスチャンスがあったのです。結果、今や世界の半導体の潮流としては設計、製造などの各工程は独立した会社が行う分業体制が出来上がりました。
分業化の利点は顧客の細かな需要にしっかりと対応できることですが、日本の半導体業界が凋落したのはこの細かな顧客のニーズに応えず垂直統合型の会社で続けようとした点にあるともいわれています。
メガチップスは日本初のファブレスメーカー
そんな、分業化に乗り遅れた日本においての初めてのファブレスメーカーがメガチップスです。創業者の進藤晶弘氏は、メガチップスの創業前、その当時日本に半導体で押されていたアメリカの半導体は上流工程(設計やアルゴリズム)をしっかりと取り押さえている現状を間近で目撃しました。
アメリカの反撃と再成長を予期したそうです。それが刺激となりこれからはファブレスでやるという意気込みをもって独立し、それが現在のメガチップスに至っています。
ちなみに、海外の有名なファブレスメーカーにnvidiaがあります。ゲーミングPC向けのグラフィックボードで有名な会社です。
強みは顧客が欲する最終製品をを一緒に再定義しそれに即した半導体を設計すること
メガチップスの強みは 半導体の知識だけでなく、最終製品に組み込まれるアプリケーション知識も顧客と一緒になって二人三脚で開発を進めるところにあります。任天堂の数々の独創性のあるゲーム機はメガチップスとの協同があって成し得たことなのです。
メガチップスのこの強みは創業者の 進藤晶弘氏 の根気強さから受け継がれていると言って過言ではないでしょう。創業者ヒストリーによると、サラリーマン時代、任天堂のそれまでの半導体では到達できないようなゲーム機構想を達成するために複数の帰納のあるチップを一つにまとめるという手法をとることでこの難題を解決しました。
また、今では柔軟な顧客の要望をかなえるために世界中のファウンドリ(メーカー工場)とパイプを持っているところもメガチップスの強みでしょう。
公開情報には記載されていませんが、一番の顧客がブランド力のある任天堂というのも頼もしくある面です。もちろん、これはリスクとして任天堂が業績悪化になった場合の影響をもろに被ることを意味します。
これまでの経営成績
これまでの経営成績を数字で確認してみましょう。
メガチップスの経営成績として2019年までは売り上げに対して利益を上げることが出来ていない状態が続いていました。これはどうしてなのかというと2019年に不採算事業を譲渡しているのと、研究開発費を盛んに行っていたからなのですね。いわば、構造改革を行っていたという状況です。そのかいもあって2020年には収益性が大きく向上しています。
研究開発費については、近年は減少傾向にあります。予想ですが、あるていどの技術開発は固まってきたのでしょうか?こればかりは想像するしかありません。
将来を見据えた研究開発と製品導入
これから、車載型の半導体やAI,ロボット,5Gなどが市場拡大が見込まれています。前者はEV電気自動車の普及によって、そして後者はIOT(もののインターネット)の普及によるものです。メガチップスはこれらの将来の市場を見据え、着々と布石を打っています。
車載向け半導体は2030年には現在規模の3倍の1兆円という市場予測がたっています。また、直近ではトヨタも2025年までにはEVを350万台投入するという発表を出されました。単純にEV一台600万円として21兆円ほどの新たな自動車部品市場が生まれるわけです。メガチップスは2025年をめどに車載半導体の商用化を目指しています。軌道に乗ればスケーラビリティとしては申し分ない規模となるでしょう。
また、新規事業の拡大に向けてはアメリカのベンチャー事業を取得することで拡大の布石を打っています。
リスクは2025年までの収益性
これまでの、収益力と経営基盤を武器に新規分野への事業ポートフォリオの拡充を進める。メガチップスですが、リスクはあるのでしょうか?
公開情報から読み取れるリスクとして新規車載向け半導体事業が本格化するのは2025年という予定になっています。今から4年先ということです。この間の既存ビジネスの収益性はしばらく任天堂頼みということになります。つまり、任天堂のゲーム機の収益性が悪化すればメガチップスも収益性が落ちることになるのです。投資家はこういったリスクを念頭に投資計画を練る必要があるでしょう。
株価は、かなり強いモメンタムを描いています。仮に収益性の悪化のリスクが顕著化したら株価の剥落を覚悟しておくべきでしょう。
まとめ
将来性という点、そして国内で希少なビジネスモデルであるファブレスメーカーであるということを考えると期待性は高いと管理人は考えます。成長が軌道に乗った暁には願望として世界を代表するファブレスメーカーに数えられてほしいところです。ただし、リスクが全くないというわけでもありません。現在の収益性の柱は任天堂向けですから、この柱がリスクとなることは頭に入れておくべきでしょう。
また、この記事はあくまで企業の将来性を分析した記事であり、銘柄購入の推奨ではないことをここに改めて明記します。
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